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確かに同じ曲を演奏しているのだが、2人の頭の中にある「曲想」がまるで違っているのである。 どこが決定的に違うのだろうか。
考えると、私の中にあるのは、「4分の4拍子」などという、西洋音楽の感覚であった。 しかし、彼が尺八を吹くとき、彼の頭の中にそのような「音符」は浮かんでいないのである。
Sによれば、尺八の学習は、師匠の奏でる音楽を何度も何度も聴き、そして真似るのである。 楽譜はあるが、その表記は単純で、西洋の譜面のように、1分間に4分音符72個とか、ここからクレッシェンド、ここでスフォルツァンド、というような細かい「マニュアル」的な記述はない。
西洋音楽はその逆で、楽譜というマニュアルを忠実に再現すれば、みな同じように演奏でき、一応形にはなるわけである。 だから、Sが「ここは、ゆっくり、でしょお?」と言っても、私は「そんなこと楽譜に書いてないよ」と言いたくなったりする。
しかし、よく耳を澄ますと、Sはごく漠然とした指示しかない楽譜から、実に微妙な音程のニュアンスを生み出し、竹のうなりと息の音の重なり合った、尺八独特の音色で音楽を作っているのである。 私はこのとき、西洋と東洋の文化の形が、Sが尺八を持ち、私がバイオリンを構えた瞬間に、二人の間で逆転していることに気づいた。
思い出したのは、日本の会社で働く欧米人が感じた、文化ギャップによる戸惑いを書き連ねた本の内容である。 その中には、「きちんとしたマニュアルもないので何をしていいのかわからず、質問したら『何か月かそこで私たちの仕事ぶりを見ていて』とだけ言われた」といった種類の不満がたくさん述べられていた。

そんな非合理的な行動の要請は、彼らにはフラストレーションの原因となってしまう。 しかし邦楽では、弟子は師匠の芸を傍で聴いて盗み、型をマスターしていくのではないだろうか。
マニュアルでは表現できない「呼吸」を体得する、という感じなのかもしれない。 見事に首を振り振り、尺八を奏でているとき、私たちは、いつか地下鉄の駅かどこかで演奏したいね、お金を集めてみようか、などと話した。
私は冗談のつもりだったのだが、Sは結構本気でやる気になっていた。 私はこの話を、以前彼とエクスチェンジしていたフェローに伝えた。
すると、「どうぞ、やってみたら?10ドル集まったら、私がディナーをご馳走するわよ」という返事。

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